第二部 日中薬膳シンポジウム(11:00〜13:00)

本草薬膳学院創立10周年記念大会並びに日中薬膳シンポジウム

2012年6月24日(日)

記念大会主催:本草薬膳学院創立10周年記念行事実行委員会

日中薬膳シンポジウム主催:本草薬膳学院・日本国際薬膳師会・中国薬膳研究会・北京中医薬大学・河南中医学院


基調講演その2
日本の伝統食品に見る保健的機能性
東京農業大学名誉教授 小泉武夫 先生

伝統食品とは、ある民族が長い歴史を通じて培い、伝えてきた食品のことで、なぜ長い間その民族に愛好、支持されてきたかというと、美味しさだけでなく、体の健康維持にとっても有効であったからにほかならない。その伝統食品といえば、日本には昔から実に多くの発酵食品があって、それらの多くは今でも日本人に愛好されているのである。

そして近年、発酵食品には驚くべき保健的機能性のあることが医学、生理学、栄養学、食品学分野で実証されてからは、一層この神秘的な食べものが伝統食品の首座に君臨してきたのである。

例えば、甘酒(煮た米と麹に湯を加えて温めておくと、甘い飲み物となる)を分析してみると、ブドウ糖が極めて高く(米のデンプンが麹菌の糖化酵素の作用を受けてブドウ糖になる)、20%を軽く越す。また、米のタンパク質も、それを分解する麹菌の酵素によって必須アミノ酸群に変えられ、これらがまことに豊富に含まれていることがわかった。

さらに特筆すべきはビタミン類である。麹菌が米の表面で繁殖する時、ビタミンB1、B2、B6、パントテン酸、ビオチンなど生理作用に重要不可欠のビタミン群を多量につくり、それを米麹に蓄積させるために、極めて多含していることがわかった。それらの成分が甘酒に溶け出してくるのであるから、甘酒は必須アミノ酸強化飲料であり、また総合ビタミンドリンク剤であるのだ。

私たちが今日、病院に入院すると、たいがいは点滴(輸液)をされる。栄養補給のために手の血管からブドウ糖液と必須アミノ酸類、ビタミン類の溶液が送り込まれる。しかしよく考えてみると、それは甘酒そのものなのだから驚嘆する。発酵を経た滋養食品の奇跡が昔の生活のこんなところにも見られるのである。

講演では、日本に古くから伝わる伝統食品の中から主として発酵食品をとりあげ、味噌、食酢、納豆、熟鮓、米麹、漬け物などの保健的機能性を述べる。

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