学生の声

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薬膳との出会い
中医薬膳師コース 木下葉子(第一期生)

 20年間、緊張の多かった自分の仕事が一段落して、さあこれからは、ゆっくりと老後を楽しもう。70才を越した私は、そんな気持ちで、日々を過していました。
 立ち寄った新宿の大きな書店で本棚を何気なく見ていた私は、1冊の本に目が止まりました。「薬膳は 健康を守る」著者は、劉海洋 とありました。
そうだ、老後は健康でなくては。何か老化防止に役立つかも知れない。そんな軽い気持ちで、その本を買い求めて帰りました。これが、劉先生を介して、私が薬膳と出合う気掛になりました。
私の料理歴と言えば、誠にお粗末なものでした。むしろ、苦手の方だったかもしれません。小さい頃、「魚の目が怖い」と言った私を、お手伝いさんが面白がって、左手を掴んだまま、鼻先に焼きかけの魚を突きつけにので、引っ張られた腕が脱臼し、1週間程度腕を吊して登校した記憶があります。
 結婚してからも、夫が折角釣ってきた川魚をそっと裏庭に埋めたこともありました。
 そんな私が、暫くして、劉先生とお会いする機会を得ることができました。お話の中で、先生の素朴なお人柄と、薬膳に対するひたむきな情熱を率直に感じることができました。私の僅かに残っているエネルギーを奮い立って、まだ何かできるかもしれない。そんな勇気を与えて頂いたひとときでした。間もなく、本草薬膳学院へのお誘いに、無謀にも入門して仕舞い、勉強が始まりました。案の定、難解な語録、医薬用語、そして、既に枯れ細っている私の記憶力との戦い、苛酷な1年間は、吐息の中で、容赦無く過ぎて行きました。しかし、やがて次第に、月1回の授業が楽しみになってきました。それ処か、回毎に積極的になっていく自分を感じるようになりました。何と、実習で、進んでスッポンの解体も試みました。
 魚の目を怖かった昔と違って、食物に対する貪欲な研究心が芽生えてきたのかもしれません。